1-9『鍛冶達との接触・院生と商人達』


時間は遡り、昼過ぎ
月詠湖の王国 領内最南東

82操縦手「車長、前方に民家らしきものが」

82車長「ああ、見えてる」

指揮車の進行先に一軒の民家があり、
それを中心に、芝を刈った小さな敷地が広がっていた

82車長「補給二曹」

補給「ああ、あれっぽいな…全車に告ぐ、500m先に目標らしき建物。
    一応警戒しろ」



家屋内

鍛冶兄「親父、来週の納品分が一本足りねぇんだけど?」

鍛冶「最後の確認中だ、待ってろ」

鍛冶は諸刃の剣の刃を鋭い眼で睨んでいる

鍛冶兄「またやってんのか!?どうせ親父の剣は、どっかの物好きが
     飾り物として買うくらいだろ?無駄な手間かけるなよ…」

鍛冶「うるせぇ、そういうもんじゃねぇんだ!!…まだかかるからお前は夕飯の用意でもしてろ。」

鍛冶兄「さっき昼過ぎたばっかだろ」

鍛冶「じゃあ洗濯物だ」

鍛冶兄「とっくにとり込んだよ」

鍛冶「なら終わるまで待ってろ!」

鍛冶兄「へいへい…」

鍛冶兄「…なぁ親父、いつまでこんな僻地に籠もってる気だ?」

鍛冶「…なんの話だ?」

鍛冶兄「しらばっくれんなよ…昔は俺らをほっぽりだして、
     世界中で無茶をやってたくせに」

鍛冶「…」

鍛冶兄「親父、今の世界情勢知ってるか?
     魔王軍は"命郷の大陸"のほとんどを制圧。
     "伝脈の大陸"でも同盟軍がかなり押されてるらしいぜ」

鍛冶「ああ。」

鍛冶兄「…各国から出た勇者もいくつもやられてるらしい。
     一昨日、荒道の町まで行ったけどよ、皆どっか不安そうな顔して
     そんな話ばっかしてやがる」

鍛冶「そうかい」

鍛冶は鍛冶兄に背を向けて、剣の加工を続けている

鍛冶兄「…ほんとに興味なさそうだな…」

鍛冶「だいたい、そんなこったろうとは思ってたよ」

鍛冶兄「はぁぁ…」

鍛冶兄は溜息を吐きながら、近くの窓の窓枠に寄りかかった

鍛冶兄「…そういや、町で妙な噂を聞いたぜ。
     月橋の町に、栄の国の勇者が立ち寄ったらしいが
     その勇者と一緒に神兵が現れたんだってよ」

鍛冶「…なんだそりゃ?」

鍛冶兄「わかんねぇ。話によると、全員が奇妙な服装で、
     車輪をいくつも持つ鋼鉄の怪物に乗ってたんだってよ」

グォォォォォ…

その時、窓の外に指揮車が停車するのが見えた

鍛冶兄「そうそう、話を再現するんならたぶんあんな感…」

一瞬沈黙する鍛冶兄

鍛冶兄「!?」



衛生「着きましたね。」

自衛「隊員D、そのまま軽機についてろ。後は降車だ、周辺を警戒しろ」

自衛達はジープを降り、敷地周辺を警戒する

隊員C「ほんとにこんなトコに原油があんのか?
    家一軒だけで、採掘施設らしいモンはみあたらねぇぞ」

自衛「ここの住人に尋ねてみりゃ、わかるだろ」

自衛は家屋から出てきた鍛冶兄を示した

鍛冶兄「ほんとかよおい…」

玄関前で唖然とする鍛冶兄

補給「ここの家の方ですか?」

補給近づくと、警戒感を与えないよう、なるべく穏やかな口調で話しかけた

鍛冶兄「あ、ああ、そうだけど…」

補給「心配しないで、危害を加える者じゃありません。
    我々は陸上自衛隊の者です」

鍛冶兄「じ、じえいたい…?…それで、何の用なんだ…?」

補給「探し物をしていて、ここを訪ねさせてもらったんだ」

鍛冶兄「探し物?」

補給「石油というものを探してる。黒くて粘り気のある液体で…
    ここで使われているのを見たと聞いてきたんだが…」

鍛冶兄「ああ、地下油のことか?」

補給「あるんですか!」

鍛冶兄「あ、あんたらが探してる物と同じかどうかはわらねぇけど…
    それより、あんたらもしかして噂の神兵か?」

補給「はい?し、神兵?」

不可解な顔をする補給に、自衛が近づき説明する

自衛「街で勇者の野郎が、俺達をそう説明しちまったんです。
    この数日で噂が広がったんでしょう」

補給に説明すると、自衛は今度は鍛冶兄へと話しかける

自衛「俺達からそう名乗ったわけじゃねぇんだが、
    その噂んなってる神兵ってのは俺達のことだろう」

鍛冶兄「やっぱりか…」

自衛「話を戻していいか?その地下油ってやつを、よければ見せてもらいたいんだが」

鍛冶兄「あんなものを探してるなんて変わってるな…待ってくれ、
     親父にも話をしてみないと。」

補給「私達も同行していいか?突然押しかけたんだ、挨拶くらいはしておきたい」

鍛冶兄「まぁ…いいですよ」

補給「ありがとう」



鍛冶家内

鍛冶「どうした鍛冶兄、突然飛び出して行っちまって?」

鍛冶はあいかわらず背を向けて作業を続ける

鍛冶兄「親父、お客さんだ」

鍛冶「客?」

鍛冶兄「なーんと…たった今話した神兵さん達だってよ」

鍛冶「何…?」

鍛冶はここで初めて振り向いた

補給「始めまして、陸上自衛隊の補給といいます。
    突然おしかけて申し訳ありません」

鍛冶「ああ…」

現れた奇妙な身なりの男に、さすがに鍛冶も表情を変えた

鍛冶兄「よくわからんが、この人たち地下油を探してるらしいんだ」

鍛冶「地下油だぁ?あんなもんに何の用が…」

?「どっひゃぁぁぁぁ!?」

言いかける途中で、突然外から気の抜けた叫び声が聞こえてきた

補給「なんだ?」

鍛冶兄「今の声は…」

鍛冶兄と補給達は再度外へと出る

隊員C「だれだコイツ?」

鍛冶妹「あわわわわわ!?」

車列を前に尻餅をついて、目を丸くしている少女がいた

支援A「ご近所さんとかじゃねぇのか?」

隊員D「ここ一軒しかねぇだろ」

彼女を遠巻に見ながら、そんなことを話す隊員C達

鍛冶兄「おい鍛冶妹、こっちだ」

鍛冶兄が声をかけると、鍛冶妹は立ち上がり、こちらへと駆け寄って来る

自衛「あ?あれは…」

鍛冶兄「俺の妹だ」

鍛冶妹「ひょぇぇ…兄貴、ど、どうなってんの?なんでこの人たちがぁ?」

鍛冶兄「この人たち?お前彼らを知ってるのか?」

鍛冶妹「薬草を集めに行った先で見たんだよぉ…突然へんなモンが現れるし。
    めっちゃビビッたよ〜」

自衛「ここに来る途中ですれ違ったんだ。見覚えがあると思ったら、
    やっぱりあんただったか」

鍛冶兄「なるほど。あのな、月橋の町で神兵が現れたって噂が広まってたろ?
     なんとこの人たちがその神兵様達なんだと」

鍛冶妹「…えぇー?」

補給「…まぁ、神兵云々はおいとくとして…少し気になったんだが?」

自衛「ええ、今聞こうと思ってた所です。こっからさっきの場所まで20kmはあるぜ。
    俺達でも20分はかかったのに、どうやってこんなに早く戻ってきたんだ?」

鍛冶妹「どーやって…って、転移魔法を使ったんだよ…?」

自衛「出やがった、また魔法か…。ほんと、なんでもありだな」

隊員C「バリエーション豊富で飽きねぇよな!
    おい、んな事より原油はどうなったんだよ?」

痺れを切らしたのか、隊員Cが文句を言いながら近寄ってくる。

補給「一応、それらしき物はあるらしい。今、確認させてもらうところだ」

隊員C「じゃあ、とっとと確認しましょうぜ。
    ここまできて、実はイカスミでした、なんてオチだったら目も当てられねぇ!」

鍛冶妹「何の話?」

鍛冶兄「ああ、どうにも彼らは地下油を探してここまで来たらしい」

鍛冶妹「地下油ぅ?あんなもんどうすんのー?」

鍛冶兄「さぁな…少し待ってくれ、話をつけてくる」

鍛冶兄と鍛冶妹は屋内へと入っていく

鍛冶妹「ただいまー…って、あああ!」

鍛冶妹は唐突に声を上げた

鍛冶妹「とーちゃん!また薬飲まなかったの!?」

部屋の中央にある机の上には、薬の入った包みが三つほど
手付かずのまま置かれていた

鍛冶兄「俺も飲むようには言ったんだがな…」

鍛冶妹「飯の後に飲んでっていつもいってるのにー!」

鍛冶「うるせぇ!好き好んでそんな糞まずいモン飲めるか!
   そんなもんなくても俺は平気だ!」

鍛冶妹「そんなこと言ってー!この間だって立ちくらみ起こしてたじゃない!」

鍛冶兄「親父、もう若くねぇんだから…少しは体に気を使ってくれよ」

鍛冶「うるせぇ奴らだ…お前等こそいい年なんだ。
   俺にへばりついてないで、独立するなり、嫁にいくなりしたらどうだ!」

鍛冶妹「ああ、ひっでぇ!かわいい娘がこんなに心配してんのにー!」

鍛冶兄「自分でかわいいとか言うな…そんなだから男がよりつかねぇんだ…」

鍛冶妹「兄貴まで…ムキー!」

自衛「おい、話が進んでねぇみてぇだが?」

鍛冶兄「うぉ!?」

鍛冶妹「ひゃぁぁ!?」

割って入ってきた自衛に驚き、二人は飛びのいた

自衛「親父さんよ、さっきも言ったが俺たちゃ、石油を探してここまで来た。
    あんたらの言う地下油ってのが、それと同じモンな可能性が高い」

鍛冶兄(この人顔怖ぇ…)

鍛冶妹(ていうかギョボい…?)

鍛冶「そんで、それを譲ってほしいってか」

自衛「話が早ぇじゃねぇか、そういうこった」

補給「おい自衛…突然おしかけてこんな事を言って、申し訳ないのですが…」

鍛冶「別に、あんなもんでよければ好きにしな。
    ただ一つ言っとくと、汲み上げるための機械は壊れて使い物になんねぇぞ。
    そこは自分達でなんとかするんだな」

鍛冶妹「ちょ、とーちゃん!そんな言い方…」

補給「大丈夫です…ありがとう。で、それはどこに?」

鍛冶「…鍛冶兄、案内してやれ」

鍛冶兄「え、おれがかよ!?」

鍛冶兄がいささか不服めいた声を上げるが、鍛冶は再び作業に戻り
声は返さなかった

鍛冶兄「やれやれ…」

自衛「悪ぃな、厄介ごとのとばっちりを食らわせちまって」

鍛冶兄「いや、別に案内するのはいいんだけど…」

自衛「?」

鍛冶妹「こっから地下油の井戸まで3スチルはあるんだよー」

補給「スチル…?」

自衛「ヘイゼルの次はスチルかよ…おい、スチルってのは一体…」

隊員C「約5kmだよ!1スチルが1.5〜8kmくらいだ。」

言い放ったのは、玄関の縁にいらついた表情で寄りかかっている隊員Cだった

隊員C「ついでに言っとくと、単位はスイチ、スイリチ、スチルの三つだ。
    スイチが7.6cm、スイリチが52cm、たぶん王族かなんかの指と腕の
    長さだろうよ。スチルの起源は知らん!」

補給「隊員C、どこでそんなことを…?」

隊員C「食料と一緒に持ち帰った書物に書いてありましたよ。
    スイチとスイリチは図もあったからそれを測ったんだ」

自衛「そうかい、そりゃご苦労だったな」

隊員C「ったく、どいつもこいつも…せっかく本を大量に持ち帰ったんだから
    少しは目を通せってんだ!」

一通り言い放つと隊員Cは車列へと戻っていった

鍛冶兄「…なんの話しだ?"せんち"がどうとか…」

自衛「後で話す、それよりその地下油の場所は?」

鍛冶兄「まぁ待ってくれ。歩かなきゃならないから支度をしないと」

自衛「それなら心配ない。俺等が送ってく」

鍛冶兄・鍛冶妹「?」



ゴォォォォォォ!

自衛達はジープと物資を降ろした補給トラックに分乗し
荒地を進んでいる

ゴガッ!ゴォッ!

隊員C「だっ!?糞!道がかなり悪いぜ!」

ジープは衛生に変わり隊員Cがハンドルを握っている

鍛冶兄「わっ!おぁっ!」

鍛冶妹「ひえ!ひゃぁぁ!?」

補給「大丈夫か?」

後席には補給と鍛冶兄妹が乗っている
ただでさえ始めての車に驚いているのに、荒地の影響で車体は揺れ
二人は軽く青ざめている
鍛冶妹は興味本位でついてきたことを後悔していた

自衛「振り下ろされんなよ!この地面の硬さじゃ、下手すりゃ死ぬぞ」

鍛冶妹「えっ!?」

補給「自衛、不安をあおるようなことを言うな。
    二人ともちゃんと座ってれば大丈夫だ」

鍛冶兄「あ、ああ…」

ゴッ!

鍛冶妹「うえっ!」

隊員C「いくらジープでも、ホイールが痛むぜ、こりゃ!」

鍛冶兄「…あ!み、見えた…あれだよ、あれ!」

鍛冶兄が示した先
乾いた荒地のど真ん中に、櫓のようなものがあった
ジープとトラックは櫓の脇まで近づき、停車する

自衛「…こいつか?」

ジープを降り、櫓へと近づく

補給「遠目には採掘用のプラットフォームに見えたが…」

そこにあったのはポンプ式の井戸のような物と
その上に築かれた木で出来た櫓だった

補給「まるで地下水用の井戸だな…」

鍛冶兄「そりゃそうさ。始めは本当に地下水用に掘ってたらしいからな」

自衛「何?」

鍛冶兄「ここからもう少し行った所に昔の鉱山がある。
     その拠点のためにここで井戸を掘ってたらしいんだけど…
     水の変わりに地下油が湧き出てきたんだ」

補給「なるほど、それでこの穴をそのまま利用したのか」

鍛冶兄「鉱山が栄えてる内は、火種や油の代わり、
     鉱山の補強のために詰め物としてそこそこ使われてたみたいだけど、
     鉱山が採掘されつくされて、引き上げると同時に放棄されたらしい」

鍛冶妹「火種になるのはいいけど、臭いがきついし、使い勝手もいいとは言えないしね…」

隊員Cや施設A達が井戸の付近を調べている

施設A「こいつが汲み上げレバーか?…ッ!くそ、動かねぇぜ…」

ポンプ用と思われるレバーは押しても動く気配を見せない

補給「錆付いてるのか?」

施設A「それか、何かが引っかかってるのか…
    どちらにせよ、これじゃ埋まってるのが原油なのか確認できませんね…」

隊員C「いんにゃ、ここに埋まってんのは原油で間違いないみたいだぜ」

隊員Cが会話に割って入る

施設A「何で分かる?」

隊員C「こいつを見てみろ」

隊員Cは井戸の近くに転がっていたバケツを持ち上げ、その中身を見せる
底のほうには黒色の液体が少したまっていた

補給「こいつは…」

隊員C「粘り気があるし微かに硫黄の臭いもする、間違いなく原油でしょうよ。
    排液口の内側にも、おんなじモンが付着してるはずだぜ」

施設Bが井戸の排液口の内側を覗き込む

施設B「…ああ、確かにこっから流れてきたんだ」

自衛「ここまでの努力は無駄にならなかったわけだ」

補給「しかし、壊れてるなら直す必要があるな…」

自衛「施設A三曹、こいつを直せますか?」

施設A「どうだろうな…この下がどうなってるのか分からんことには…」

自衛「おい、ここの点検とかはどうやってたんだ?」

鍛冶兄「ああ、それなら…」

鍛冶兄は井戸から少しはなれると、しゃがんで土を払う
すると地面に木で出来た蓋のようなものが現れた

鍛冶兄「えーと…何かテコの変わりになるようなものはないかい?」

補給「誰かスコップを」

施設Aが補給トラックからスコップを持ち出し、蓋の隙間へと入れ込む

施設A「よっ!っと…」

スコップを引き倒すと蓋が開き、地中へと続く穴が現れた

自衛「こいつは?」

鍛冶兄「最初に井戸を掘ってた時の、作業用の横穴だ。
     完成後も点検用として残してあったらしい」

隊員Cがライトを点灯させ、中を覗き込む

隊員C「相当深いぜ…どんくらいあんだよ?」

鍛冶兄「80スイリチくらいって聞いてるけど」

隊員C「…約40mか。」

施設B「おい、この梯子…かなり痛んでるぜ…」

施設Bがかかっている梯子をつつく

鍛冶兄「長いこと誰も入ってないから、かなり荒れてると思う」

施設A「こりゃ全部調べるだけでも、ちょいとかかりますよ…」

補給「どれくらいだ?」

施設A「おおよそ3〜4時間はかかるかと」

補給「仕方があるまい。自衛、俺達は今から調査を始める。
   彼らを家まで送り届けてくれ。」

自衛「いいでしょう。隊員C、お前もここに残って補給二曹達を手伝え」

隊員C「へーへー、了解了解…」

自衛「さ、二人とも行くぜ。」

鍛冶妹「うう…」

鍛冶兄「またあれに乗るのか…」

鍛冶兄妹は自動車に苦手意識ができたらしい

自衛「補給二曹。夕方までかかるなら、いっそここで夜営をしましょう」

補給「そうだな…ここまでろくすっぽ休憩もせずに来たからな…。
    鍛冶兄君、迷惑でなければ近くで夜営をさせてほしいんだが?」

鍛冶兄「え?ああ、別にかまわんよ。時々キャラバンとかが立ち寄ってくし」

補給「ありがとう、自衛、82車長達にも伝えてくれるか?」

自衛「了解。さて、行くか。」

自衛はジープに乗り、エンジンをかける

鍛冶妹「…あ、兄貴から先にどうぞ〜…」

鍛冶兄「いや、ここは女の子優先だ!お前こそ先に…」

自衛「…」

鍛冶兄妹はお互いに譲り合い、なかなか乗り込もうとしない

鍛冶妹「いやいや、やっぱり年長者から…!」

鍛冶兄「ははは、何を遠慮しているんだい?妹よ…」

鍛冶妹「あ、あ、兄上こそ…」

自衛「早くしねぇか、ボケ!」

鍛冶兄「うぇ!?」

鍛冶妹「ひぇ!?わかったよぉ…」

渋々後席に乗り込む二人だった



自衛達は鍛冶一家の家へと戻ってきた

衛生「戻ってきたぞ」

隊員D「自衛士長とここの兄妹だけみたいだぜ?」

ジープは指揮車の真横に停車した

鍛冶兄「つ…着いた…」

鍛冶妹「生きた心地しなかったよ〜…」

二人は青ざめた顔でジープを降りる

82車長「どうよ?」

自衛「的中だ、原油を汲み上げてる井戸があった」

隊員D「補給二曹達はどうしたんです?」

自衛「鍛冶の親父が言ってたように、井戸がぶち壊れてやがってよ。
    修繕できないか補給二曹達が調べてる」

82車長「成程。」

   俺達はここで夜営の準備をする」

82車長「いいのか?ここで陣を張っちまって?」

自衛「大丈夫だ、許可はもらった」

82車長「よし、ほんならかかるか」



紅の国 領内

精風の町へ続く道を、二台の馬車が進んでいる
その馬車の荷車の上で、院生達は揺れていた

燐美の勇者「すみません。助けてくれた上に、乗せてもらっちゃって…」

商人A「なぁに、これも旅の醍醐味さ。
    しかし、まさか魅光の王国の勇者様とは、驚いたよ」

院生達は森を抜けてしばらく進んだところで、この商人達と出会った
そして院生の怪我のこと、目的地が一緒ということを受けて、
風精の町まで乗せて行ってくれることとなったのだ

商人B「それに騎士様もいっしょときた。これは心強い限りだ」

麗氷の騎士は愛馬にまたがり、馬車の列と並んで進んでいる

商人B「…よし、できた。しばらく安静にしてね」

院生「あ、ありがとうございます…」

足首の手当てを受け終わった院生は、辺りを見渡す

院生「……」

荷台の後ろに一人の女性が座っていた
商隊の護衛らしく、身軽そうな服を身にまとい、剣をさげている
しかし、最も気になる所が別にあった

院生(頭から耳生えてる…)

女性の頭からは狼のような耳が生えていた
そして衣服から覗かせるしっぽを揺らしながら、周囲を見張っている

狼娘「?」

院生の視線に気づいたのか、狼娘はこちらに振り向いた

狼娘「どうかしたかい?」

院生「い、いえ!その…」

狼娘「?」

狼娘は耳としっぽだけでなく、体の所々が毛で覆われており
さらに目や牙も狼のそれだった

院生(わぁ…ゲームのキャラクターみたい…)

狼娘「…もしかして、人狼を見るのは初めてかい?」

院生「え!?あ…!」

無意識にじろじろと見てしまったらしく、慌てる院生

狼娘「ははは、そんな慌てなくてもいいよ。別にあんたが始めてじゃない。」

院生「す、すみません…っていうことは、ホンモノなんですか?」

狼娘「もちろん、確かめてみるかい?」

狼娘は院生に近づき、しっぽを差し出してみせる

院生「…じゃ、じゃあ…」

恐る恐るしっぽに触れてみる院生

院生(うわ…フワフワしてる…)

その手触りの良さに、両手でわさわさと触りだす院生

院生「…」モフ

狼娘「…!」ビクッ

院生「…」ワサワサワサ

狼娘「…ちょ、ちょっと…くすぐったいって…!」

院生「あ!す、すみません!」パッ

院生は慌てて手を離す

狼娘「ふー…しかし、あんたもなんか変わってるね。
    格好といい雰囲気といい…どっから来たんだい?」

院生「えっと…その…異世界から…」

狼娘「…えっと…おもしろいよ…」

院生「いえ、冗談じゃなくて…」

燐美の勇者「本当だよ」

二人の会話に勇者が加わる

燐美の勇者「彼女は本当に異世界から来たんだ」

狼娘「…って言われてもなぁ…」

燐美の勇者「じゃあ、院生さん。あれ見せてあげたら?
       えっと、ケー…なんとか…」

院生「携帯ですか?」

燐美の勇者「そうそれ」

院生はカバンから携帯を出す

狼娘「なにそれ?」

院生「私の世界で使われてる…なんていうか、いろんな機能が詰まった機械です。
    たとえば…」

院生は携帯の音楽機能を起動する
すると携帯から曲が流れ始めた

狼娘「わ!?」

燐美の勇者「へぇ…こんなこともできるんだ」

狼娘「な、何これ!?中に妖精とか入ってるわけじゃないよね!?」

院生「そうじゃなくて…人の声や楽器の音を記録して、
    好きな時に流すことができるんです」

狼娘「…すごいな」

燐美の勇者「これで信じた?」

狼娘「う、うん。こんな魔法見たことないよ…」

院生「ま、魔法じゃないですよ…」

そんな会話を繰り広げながら、院生達は風精の町を目指す



夕方
鍛冶一家の敷地から100m地点

設営された宿営地に、補給達が戻ってきた

隊員D「すげぇ顔だな隊員C、怪人みてぇだ。
    そのままテーマパークかどっかで、美人をさらって来てくれよ。」

隊員C「自分でやれ。原油ランドは24時間開園中だぜ。
    お前も漬かって来たらどうだ、えぇ?」

隊員D「遠慮しとくよ」

長時間の作業で、補給二曹達は全員原油まみれになっていた

82車長「二曹、お疲れさんです」

補給「ああ、ありがとう。そっちもご苦労だったな」

82車長「向こうはどうでした?」

補給「一応、大体の構造と破損箇所は分かった。
    直せないことはないんだが…」

自衛「だが、なにか?」

隊員C「破損箇所が多すぎんだよ。長いことほっといたせいで井戸そのものも弱くなってる。
    一度、可能な限りバラして、構築しなおさないとダメだ。」

施設A「できれば施設作業車をこっちに回してもらいたい所だ。
    クレーンもあれば楽なんだが…」

82車長「クレーンなら砲側弾薬車に付いてるのがあるぜ。可能ならそいつも寄こしてもらおう」

自衛「本格的な補修作業は少し先になるな」

隊員C「ちょい待て、まだ肝心なことがある」

自衛「あぁ?なんだ?」

隊員C「補修のための材料が足らねぇんだよ。木材は適当な所から切り出すにしても、
    他にも足らねぇモンばっかだ!」

施設A「この辺りで材料が調達できそうな所があればいいんだが…」

自衛「鍛冶兄達に聞い来よう。支援A、一緒に来い」

支援A「へいよ」

補給「頼む、他はそれぞれの作業に戻ってくれ」

報告が終わると、隊員達は各々の作業に戻ってゆく

82車長「二曹、湯が沸かしてありますから、風呂とはいきませんが体を拭くぐらいは。
     そのままでいるよりよっぽど良いでしょう」

補給「ありがたい。それじゃあ、お言葉に甘えるか」

隊員C「やっと油を流せるぜ…」

隊員D「なんだよ、原油怪人隊員Cとはお別れか」

隊員C「うるせーんだよ、そのネタは二度と言うな!」



一方、五森の公国 北の砦

砦に37騎士隊が到着し、負傷者の救護活動と敵捕虜の拘束が本格的に始まっていた
外はすでに薄暗くなり始め、手空きの者が砦内のランプに火を灯してゆく

37隊長「…よし点いた」

三階の指揮所でも、37隊長がランプに火を灯す

37隊長「すみません、中断して」

隊員E「いえ。じゃあ、続けてくれるかな?」

37本部書記「あ、はい」

三階の指揮所にて、隊員E達は書記の報告を聞いている最中だった

37本部書記「こちらの被害は死者93名、負傷者60名です…
       死者の内訳は元々の砦の兵が17、第一騎士団が76…です」

37隊長「…一緒に捉えられていた商隊は?」

37本部書記「衰弱こそしていますが、彼らに死者はありませんでした」

37隊長「そうか…不幸中の幸いだな」

隊員E「敵の情報はどれくらい判明したか、教えてもらえるか?」

37本部書記「あ、はい。格好から見るに敵は雲翔の王国の兵士のようです。
       ただ、離反兵なのか正規兵なのかはまだ…」

37隊長「正規兵だとは思いたくないがな…」

隊員E「その雲翔の王国、というのは?」

37参謀「この、地翼の大陸の東に領土を持つ国です。
     雪星瞬く公国と領土を接していますので、
     今回は領土を通過して、ここへ押し込んできたのかと」

隊員E「国をまたいで攻め込んでくるなんて…無茶苦茶をするな…」

37隊長「もしくは、雪星瞬く公国にも攻め込んでいるか…
     くっそ、嫌な考えしか浮かんでこないな…」

37参謀「本来ならすぐにでも斥候を出すところなんですが、この状況では…」

指揮所の空気が辛気臭くなった所へ、突如廊下からバタバタと音が聞こえてくる
そしてドアから37隊兵Aが飛び込んできた

37隊兵A「た、大変です!」



砦の一室

その部屋は捕まえた敵将軍を一時的に拘置するために使われていた
しかし、その敵将軍は部屋の中で、口から血を流し死体となっていた

37隊長「なんてこったい…舌を噛んだのか?」

37隊兵A「いえ、一応口も塞いであったのですが…」

衛隊A「…」

衛隊Aが死体を調べている

隊員E「分かるか?」

衛隊A「おそらく毒です。あらかじめ、歯か口の裏にでも仕込んであったのではないかと」

37隊長「くっそ…」

隊員E「大事な情報源だったのにな…聞き出す前に死なれるとは…」

隊員B「他の兵士じゃだめなんすか?」

隊員G「馬鹿、コイツは総大将だ。そりゃ、ほかの奴も多少はなんか知ってるだろうが、
    こいつしか知らないこともあっただろうよ」

隊員E「37隊長、もう一度敵の幹部の身体検査を行ったほうがいいでしょう」

37隊長「そうだな…参謀、2隊を集めてくれ」



二階の一室

その部屋は女性負傷者の救護のため使われている

五森騎士「ッ…」

その部屋の片隅で五森騎士が、満身創痍の体をマットから起こそうと奮闘していた

同僚「あ、おい!」

別の兵を診ていた同僚がそれに気付き、止めに入る

同僚「また無茶しようとして!おとなしくしてなきゃ駄目だ!」

五森騎士「放せ…!失態を犯した身で、ただ黙って休んでなど…あっ…!」

しかし足に力が入らず、五森騎士はその場に座り込んでしまう

同僚「ほらみろ…おとなしくしてるんだ」

五森騎士を強引に横にする同僚

五森騎士「く…」

五森騎士は少し抵抗したが、結局、おとなしくマットに横になった

37本部書記「失礼します。すみません、ジエイタイの同僚兵士長はいらっしゃいますか?」

声に振り替えると、部屋の入り口から37本部書記が手招きしている

同僚「え?ああ、待ってくれ。君、彼女を見ててくれるか?」

救護兵「分かりました」

五森騎士を近くにいた救護兵に任せ、部屋を出る
部屋の外では隊員Eが待っていた

隊員E「兵士長じゃなくて陸士長な」

37本部書記「あ、すみません…」

同僚「どうしました?」

隊員E「ああ、悪いな仕事中に。少し面倒なことになってな…さっき捕らえた敵将軍がいたろ?」

同僚「はい、何かわかったんですか?」

隊員E「事態としては真逆だ…そいつが自殺してるのが、たった今発見された」

同僚「自殺!?」

隊員E「拘置していた部屋の中で、口から血を流して死んでいた。
     衛隊Aによると、口内に仕込んでた毒で自決したものだと」

同僚「どうしてまた…?」

隊員E「わからん。よほどこっちに知られたくない情報でも持ってたのか、もしくは個人的な動機か…
     ともかく、37隊長がその件も含めて、姫さんに直接報告したいらしくてな。
     医薬品の補充もしなきゃならんから、そのついでに木漏れ日の町へ送ってくことになった。
     お前、ここを離れられそうか?」

同僚「多少は落ち着きましたんで、引継ぎだけすればなんとか」

隊員E「じゃあ、1〜2人、誰でも良いから集めてトラックを用意しといてくれ」

同僚「分かりました」

隊員E「すまんな。あーっと…あの騎兵隊長の娘はどうだ?」

同僚「先程から、自分にも働かせろと何度も無理に起き上がろうとして…
    そのたびに押さえつけてますが…」

騎士団長「あいつらしいな、見張っておかないとまた無茶をするかもしれませんよ」

隊員E「?」

唐突に会話に割って入る声

隊員E「騎士団長さん」

通路の先から騎士団長が歩いてくるのが見えた

騎士団長「あいつは真面目な娘なんですが、時々周りが見えなくなりましてね。
      ま、私も人のことを言えた身ではありませんが…」

隊員E「休んでいなくて大丈夫なんですか?」

騎士団長「なんとか…それより、木漏れ日の町へ行くとおっしゃられましたか?」

隊員E「ええ、37隊長殿が直接報告に行きたいとのことで。」

騎士団長「もしよろしければ、私も同行させていただけないか?」

隊員E「同行ですか?」

騎士団長「もちろん、あなた方にお願いなどできる立場でないとは分かっています。
      しかし、今回の件は私が判断を見誤ったのが原因だ。
      その責任を、姫様の前でとらなければならなりません」

隊員E「我々は別に構いませんが…」

五森騎士「それは私の役目です!!」

五森騎士の叫び声が隊員Eの言葉を遮った

救護兵「すみません!押さえ切れなくて…駄目ですって動いちゃ!」

五森騎士の腰には救護兵がしがみついている

五森騎士「うるさい!姫様には私が頭を下げます!私を連れて…ッ!」

言いかける途中でその場に崩れる五森騎士

同僚「ああ、もう世話のやける…!」

同僚と救護兵が二人ががりで支えにかかる

騎士団長「五森騎士。気持ちは分かるが、今回は私にまかせてくれ」

五森騎士「しかし!」

騎士団長「今のお前のそんな姿を見せたら、返って姫様のお心を煩わせることになるぞ」

五森騎士「…分かりました。」

言われると五森騎士はおとなしくなり、救護兵に支えられ戻っていった

隊員E「急におとなしくなったな?」

同僚「彼女と姫様は何か関係が?」

騎士団長「ええ、五森騎士は五森姫様の血縁の物でして。
      あいつは姫様のことを姉のように慕ってましてな…」

同僚「血縁者か…」

騎士団長「ともかく、これで少しはおとなしくなるでしょう。」

隊員E「そうだといいが…我々は町に向う準備をしますので、そちらも身支度を。
    物資の搬送もありますので、同行者は最低限でお願いします」

騎士団長「わかりました、すぐに整えましょう」



砦の南城門付近

トラックが一両、エンジンをふかしている
辺りは完全に暗闇につつまれ、砦の所々で松明が灯されていた

隊員E「…来たな。」

砦の入り口から騎士団長と37隊長、護衛の兵二名が歩いて来た

隊員E「こちらの準備はできてます」

騎士団長「私達も大丈夫だ」

隊員E「では、後ろに乗ってください、同僚、偵察、頼む」

偵察「了解。」

同僚と偵察の手を借りながら、騎士団長達は荷台へと乗り込んでゆく

同僚「頭ぶつけないよう気をつけて」

騎士団長「ああ…」

護衛A「唸ってるけど大丈夫なのか…?」

エンジンの振動に護衛の兵はいささか不安を感じているようだ

偵察「大丈夫だ、ほら手を貸せ」

偵察は護衛兵を荷台へ引っ張り上げてやる

隊員E「じゃあ、隊員G。戻るまで頼んだぞ」

隊員G「了解」

37隊長「だいたいのことは副隊長に引き継いであるから
     何かあれば、奴に聞いてくれ。」

隊員G「分かりました、お気をつけて」

隊員Gが敬礼し、隊員Eがそれに返す
37隊長も騎士団式の敬礼で答えた

隊員E「それじゃ、行きましょう」

隊員Eは助手席へと乗り込み、37隊長は偵察の手を借り、荷台へと乗り込んだ

37隊長「よろしくたのむ」

偵察「お任せを、なるべく奥に詰めて下さい」

37隊長たちにはなるべくフロント側に詰めてもらい、
同僚と偵察は荷台の端に座って後方と車内を監視する

隊員E「輸送A、出してくれ」

トラックはエンジンの唸りを上げ、走り出した

37隊長「うわっと…」

輸送A「えー、本日は陸上自衛隊観光へようこそ。
    真っ暗闇でなんも見えませんが、トラックの揺れくらいはご堪能下さい。
    なお、当車は全席禁煙と…」

隊員E「黙って運転しろ」

輸送A「いっぺん言って見たかったんですよ」

悪びれも無く言う輸送A

門を抜けたトラックは、37隊陣地を横切る
陣地には少数の兵しか残っていないが、その脇では自走迫撃砲が鎮座し
今現在も周辺全域を射程に捉えていた

陣地を通過し、トラックは木漏れ日の町を目指す



夕刻過ぎ

院生達は風精の町へと到着した
それぞれの馬と馬車を町の入り口の厩舎に預け、町へ入る

院生(すごい…絵本やゲームで見るような町…)

燐美の勇者「さて、まずは宿を探さないとね。」

商人A「燐美さん。この町には我々がよく世話になる宿屋があります。
     よければ燐美さん達もいらっしゃいませんか?」

狼娘「なかなか待遇のいい宿屋なんだよ」

燐美の勇者「えーっと、そうしたいのは山々なんですが…
       ちなみに、そこの料金はどれくらい…?」

商人A「料金ですか?えーと…」

商人は宿代を示してみせると

燐美の勇者「あう…」

燐美の勇者はうな垂れた

狼娘「どうしたんだい?」

麗氷の騎士「お恥ずかしい話なんですが、私達は若干金欠気味でして…」

燐美の勇者「ちょーっと、良い宿に泊る余裕は…あはは…」

麗氷の騎士「まったく、前の町で後先考えずに新しい剣など買うから…」

燐美の勇者「だ、だって…!鋼竜の巨大鱗から削りだした剣なんだよ!出物なんだよ!
       麗氷も院生さんを助けた時に、これの切れ味見たでしょ!?」

燐美の勇者は自分の剣をかかげて、そのすばらしさを訴えている

麗氷の騎士「それは分かるが、武器に資金を全部吸い上げられたら元も子もないだろう?」

燐美の勇者「うー…」

麗氷の騎士にしかられ、燐美の勇者は縮こまってしまった

院生(麗氷さんって、燐美さんのお母さんみたい)

麗氷の騎士「まあ、私達は安宿を探すとして…院生さんはどうしたい?」

院生「…へ?」

麗氷の騎士「少し落ち着きたいだろう?院生さん一人分くらいの宿代ならなんとかなる。
       よければ商人さん達と同じ宿に泊まるといい」

院生「え!で、でも…」

燐美の勇者「うん。疲れてるんだし、安宿じゃやだよね。そうしなよ院生さん」

狼娘「こっちとしては大歓迎だよ。色々話も聞かせて欲しいし」

院生「えっと…」

しばらく考える院生

院生「…せっかくですけど、私は燐美さん達と一緒がいいかな…なんて…」

燐美の勇者「え、あたしたちと?」

院生「あ、足手まといならいいんです!ただ、燐美さん達と一緒のほうが安心するっていうか…」

燐美の勇者「足手まといだなんて、そんな!元々は一緒の宿の予定だったんだし!」

申し訳なさそうにする院生を、あわててフォローする燐美の勇者

狼娘「あっはっは、フラれちゃったな」

院生「す、すみません」

狼娘「そんな謝ることないさ。仲間と一緒にいたいってのは良くわかるよ」

麗氷の騎士「申し訳ない、せっかくお気遣いをしていただいたのに」

商人B「とんでもない。それより、うまい料理を出してくれる酒場を知ってるんだ。
    宿が見つかったら、来るといい」

商人Bはそう言うと地図を渡した

燐美の勇者「ありがとうございます」

麗氷の騎士「院生さんも、すまなかった。そういったことも考えるべきだったな…」

院生「い、いいんです!私のワガママなんですから!」

狼娘「ははは、仲いいな。じゃ、後で酒場で会おう」

そう言って、院生達と商人一行は一度別れた


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